木のスプーンの制作一覧

木工と陶芸の経済

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塗漆のスプーン、先日補修も全部終わりました。うわー、宝の山じゃ。目方的には単価は高いぞ。

ところで、以前陶芸家達とグループ展をした折、磁器でレンゲを作っている人がいた。なかなか、目の付けどころがいいと思った。絵が入って¥2500なり。その方は、私よりも一回り若く、経験は7,8年だという。結構売れていた。

陶芸は道具なんて、窯と土練機と轆轤があればいいんでっせ。後は、紐とか棒とか道に落ちているもので十分だ。土だってその辺から掘ってくればいいしな。まあ、そんな重労働するより買った方が安いけど。それに比べて木工の機械ときたら際限ないし、小さな彫刻刀でも最低3000円はする上、何十本もいるのだ。

レンゲは型に押しつけて作るのだろう。素焼して、釉かけて、また焼いて。どれも一瞬の作業だ。私も、焼き物の絵付けを頼まれたことがあるのだが、下手でも勢いのある方がいい、慎重に上手に描いたものなんて焼き上がると見られたもんじゃないんですよ。

木のスプーンの場合、木地作りの大変さはあえて省くが、塗りの工程だけでも、下地2回、刷毛塗りは、半分ずつ行うので6回、その間に研磨が3回だから、都合11工程だ。そいで¥4500なり。漆は高いし、漆刷毛一本が何万円もする。しかも、そう売れない。ひがむわな~。

まあ、自分で選んだ道だからしょうがないけど、これはねえ、中学に入ったとき部活を選ぶんだけど、絶対モテるはずのない卓球部なんかにちゃんと入部する奴がいるのと同じなんでしょうねえ。

スプーン作りの大変さを少しでも理解してもらうため、個展の時は、写真のような木地作りの工程を展示することもある。

商品は5,6本並べて、その下にプライスカードを置いてるんですが、しょうがないことかもしれないけど「全部でこのお値段ですか?」と聞いてくる客が一回の個展で一人はいる。腹が立つより、気が抜けるので、

最近は4,500(一本)と書くようにしている。

しかし、陶芸も最近はなかなか売れないみたいで、備前焼なんて岡山県で作家が300人もいるらしく、そりゃ大変じゃ~!! 案外、木工もいいのかも。でも、売れっ子になって、やっと人並み以下の生活がゲット出来る…………というのは寂しいな。

 


最後にアクシデント発生。

漆塗りのスプーンの製作、最後にアクシデントがありました。順調に推移してきた漆塗りでしたが、上塗りの残りの半分、最後の最後で失敗しました。

これは、快適な波乗りをもたらした、異常な気温の上昇のせいです。土曜日、室温の上昇に伴い、漆室(むろ)の温度も20度近くになっていることは分かっていましたが、通常温度が上がれば、湿度は下がるのであまり気にとめていませんでした。

ところがどっこい、温度が上がると、室の木からどんどん水分が排出されるみたいで、様子を見るために扉を引くと”モアッ”という蒸気が!「こりゃいかん!!」と思いましたが後の祭りで、速過ぎる乾燥で出来る”皺”が出ていました。しかも、乾燥が早いと、漆のまったりとした艶がなく、なんかすごく安っぽい感じになるのです。Dsc_00123333

なぜか、黒漆は、セーフでした。高湿度の状態が短かったのと、やや古くなっていた漆が幸いしたようです。

普通の人が見てもわからないかもしれませんが、そこは気分の問題で、50本をやり直すことに。

この砥ぎ出しは時間がかかります。失敗のつけは大きいのじゃ。本日、ようやっと最後の塗りが終わりました。明日、室を開けるまではわからないけど。

まあ、こうやって失敗して学んでいくんですね。今回の塗漆の進歩は大きかったです。


砥ぎ、磨ぎ。

今日は、雨で暖かった。まだ2月。夏が恐ろしいな。

Dsc_001722 スプーンに手でサンドペーパーをかけるのは、木地にも勿論かけるが、塗装の段階では、捨て塗りで1回、中塗りで2回かける。

今朝は、上塗り前の最後の研ぎをしていた。一番念入りにする。とはいっても「手作り品」なので、そこそこでいいのだ。便利な言葉じゃ。ただ、70本にかけると指がつる。

塗るごとに、研ぐごとに形が決まってくるので、わりに楽しい作業ですが、楽しんでいられないのがプロの厳しいところです。

その後、黒、ベンガラ朱、呂色と3タイプに分けて、柄の方だけに上塗りをしました。呂色は、失敗がないように新しい漆を使ったら、意外に色が濃く、ちょっと問題です。まあ、使っているうちに透けて来ます。

今回は、厚く塗り過ぎて、或いは室の湿度が高過ぎて出来るシワも殆どなく上出来です。修練は積むもんですね。自己流でも何とかなるもんですね。まだ明日、残りの半分が残っているんじゃが。

Dsc_0002222 全然関係ないけど、我が、いの町のショッピングモールの夜景。割と都会やね~。

本屋もあって便利ですが、殆ど立ち読みの人ばかりで、買ってる人は少ない。レストランもガラガラだし、この厳しい時代いつまで続くのか?

結局、最後は身の丈に合ったものになるんでしょうな。


塗りは続く。

今日は、スプーンを塗っている最中に、友人の石彫家が訪ねてきて塗りながら話をし、終って飯を食い、それからまた、話し込んで仕事がいまいち進まなかった。お互い、孤独な稼業なので、たまに会うと話は尽きない。

一点の金額が、数千万からの人の話は羨ましくもあるが、スプーン塗ってるのまんざら捨てたもんじゃない気もする。聞けば、モニュメント等の受注はビジネスというか、政治力というか、いろいろ私など及びもつかないことがあるみたいですね。運搬の特殊車両代も1日100万円とかで、スケールが違います。

2年前までは、市町村合併とかで、予算上使い切らなくてはならない金が一杯あって、バカみたいに仕事が来たそうです。でも、今は全然ないとか。この人なんかは、お利口なんで、とっくに見越して、新たなビジネスの種をまいており、悠々自適です。

Dsc_0008333 ちょっとショボイけど、スプーンの塗りは進行中です。

こうやって片方ずつ塗っていきます。自己流のやり方です。輪島屋なんかは、柄を長く作っておいて一気に塗り、後でポキット折って、お尻を仕上げるようです。

一日、一回しか塗れないので、午後は別の仕事をします。

Dsc_0054 あんまり、根を詰めるのも良くないので、昨日は久々に裏山にモモと上がっていました。

モモも14歳でだんだんUPに耐えられなくなってきています。でも、可愛いのは同じです。


漆刷毛

今日のは木工家向けにみえて、実はお客さん向けのブログです。

Dsc_0003 塗漆は写真のような刷毛を使います。

通し刷毛といって、中に女の人の髪の毛が通っています。それを、チビてきたら、鉛筆のように削り出して使います。

その時、穂先の形も整えなければなりません。私のはもう相当変形しています。テープを巻いているのは折れたんじゃなくて、かなり力が要るんで、指が痛くなるためです。

以前は拭き漆でやっていましたが、塗膜がないので半年もするとスプーンの先端が剥げて木地が見えてきます。口にするもんだし、耐久性がないと困るので、今はもっぱら塗漆です。

仏像の製作から、ロクロ加工までそれなりにこなしますが、塗り漆だけは厄介です。本職のように常に続けてないと、不都合なことが多いのです。刷毛や漆をスタンバイさせたり、しまうのも大変手間なので、本当は、一日中続けられる量の製品が欲しいのです。

漆の乾き具合の調整やら、ゴミ対策は本職でないと困難です。ウチには塗漆専用の部屋はありませんから、どうしてもゴミが混ざってしまいます。

大概の事は「奥さん、これが手作りの味でっせ~!!」という、私ですがこればっかりはね~。「そのうち取れます」としか言いようがありません。漆芸家に笑われたら「オメーに、こんだけ下手に塗れるか?」と言ってやります。

それでも、最近は大分上手くなっています。

落ちのないブログですいません。ちょっと、しんどいのじゃ。納期のない仕事は普通引き受けないし、すべて余裕で仕事を進めるのがポリシーですが・・・・・・背に腹は代えられんのじゃ。


捨て塗り

Dsc_000255 下地に、一回生漆を浸み込ませた状態です。高杯にも塗りました。

スプーンは塗漆をしますので、拭き取りはせず、指でしごいたくらいです。

軽くペーパをかけた後、もう一度生漆を浸み込ませて下地は終わりです。

Dsc_000866 漆風呂です。ここで湿度を上げて漆を乾かします。水分で硬化するというか。

本体は杉で出来ています。回りに椅子用の低発泡ウレタンの耳を張っています。

普段はあまり使いませんが、小物や塗漆の時は必要です。

Dsc_001766 内部はこんな感じ。

霧吹きで内部を湿らせて使います。

後ろに張ってあるのは、以前使っていたベットシーツです。

そんなこと書かなくてもいいのにな。

ここんとこ、働き過ぎたので、今夜は飲みに行こう。なんか、俺が真面目に働くのは、納期がキツイ時だけだな。

忙しいのに、ブログの更新まですることないのにな。


塗りの準備

今日も一般の人にはわからない木工家専用のブログです。

木のスプーンの塗りの準備をしています。納期がぎりぎりなので、先へ先へ段取りを進めなくてはなりません。今回は久々に漆風呂を使うので、1週間前から湿を打って調子を出すようにしています。

Dsc_000955 これは、手持ちの呂色漆を乾くかどうかチェックした手板です。古いものもありますが、大丈夫なようです。漆はあんまり古くなると乾かなくなるんです。

以前、京都のS商店から国産赤呂を買って、チェックをせずに使ったところ、乾きません。かといって拭き取ることも出来ず、漆芸家に泣きついたところ”膿む”といって、どうしようもない状態だから廃棄するのが一番いいとのこと。残酷じゃ~!諦めきれずにいろいろ試みましたがだめでした。スプーン全部に塗ってしまったので30万円ほどの損害でした。思いつきで店を替えたのが間違いでした。文句も言ってないけど、ここに発表しておきます。チェックしなかった私も失敗です。漆仕事に関しては全て”急がば回れ”で進めなくてはなりません。

拭き漆の漆がどうも乾かないと思ったら、漆自体が悪いことも多いです。また、純国産漆と書かれて出回っている漆もブレンド品みたいですね。ブツの純度が低いな・・・・・・・とセンター街の怪しいイラン人も言っていました。

私は、今は信頼できる闇のルートを確保していますが、普通の人が漆を求めても良いものは得にくいと思います。Dsc_0002323

木地が出来ました。納期に自信がなく、70本しか出来ませんでした。

無理をしたので爪と肉が剥離しそうです。腱鞘炎もひどい。

今回は塗り漆なので、木地は少しいい加減です。


続、木のスプーン

昨日の木のスプーンの最初の木取りですが、それぞれを、ビッチリ隣接させて無駄なく墨を打つのが普通だと思いますが、そうすると、バンドソーで挽いていると、一本削り出すうちに、材料から刃が外れることが何度か発生します。

そうすると、ラインは乱れるし、時間がかかります。鋸身にも機械にも無理な力がかかります。材料の余裕にもよりますが、贅沢に少し放して墨を打つと、一本のラインで切り出せてスムーズかつ美しいです。どっちを取るかですけど・・・・・最初のラインの正確さは「マス・オオヤマ方式」には大切です。Dsc_001066

グラインダーであらかた削った後、彫刻刀を使います。趣味の木工ならば納得のいくまで出来るでしょうが、仕事の場合、悪く言えば”許される限り適当にすませて”次に移らなければなりません。

良く砥いだ刀であれば、ホウはサクサク切れます。

Dsc_0002333 作業台の穴に照明を差し込んでいます。

細かい連続作業の場合、適切な照明が、作業を楽にしてくれます。

夜なべの作業で見にくい場合は、あっさりあきらめて、次の日に回した方がいいです。

今日は、クソ真面目な、木工家のためのブログで終了します。

ところで、恥ずかしながら、全然知らんかったけど、政治家の「小渕優子」はどうも、取ってつけたような不思議な国会議員だと思ってたけど、小渕総理の娘なんだね。

日本の政治家って、地方の商店街のオーナー一族みたいだね。


スプーンの製作始まる。

結婚式の引き出物にとスプーンの注文を受けた。でも、数はチョビット。少数精鋭の結婚式だろうな。一度に100本は作らないと採算は取れない。納期はないが、少量の赤字仕事は出来ないので頑張らないと。

スプーンの製作は利益が薄く、趣味の領域かもしれない。でもお客様にとっては、良く使うものなので元が取れ、おススメです。実際、追加注文される方が多いです。

Dsc_00213 勘を取り戻すために一つ作ってみました。マイナーチェンジで、先端の凹みが少し深くなっています。

それから、今回から画期的な「マス・オオヤマ方式」を導入しました。

これは、金網デスマッチや素手で熊と戦ったりしながら編み出した手法で、容易に教えることははばかられるのですが、今回に限り、こっそり伝授します。

それは”墨線ぎりぎりを、紙一重で見切り、バンドソーで切断するということです。”ベルトサンダーでの仕上げが早く終わるし、ペーパーの痛みも少ない、一石二鳥の手法なのです。当り前ですって・・・・・それが中々出来んもんなのよ~。

Dsc_00296 「マス・オオヤマ方式」で続々生み出されるスプーン達。

材料の中で最後に残るのはほんのチョビットなのね。