鵜島啓二先生は輪島の”漆塗り作家”では、角偉三郎先生と双璧をなします。しかし、玄人好みの作風で一般の方は知らないかもしれません。
5,6年前になるか、『輪島屋 善仁』の山下さんの紹介で、高知の漆器コレクターのオバサマ達と一緒に、鵜島先生を訪ねた。輪島屋は自社の製品だけでなく、鵜島先生他、地元の作家、職人の製品も売り歩いているんです。
鵜島先生は気さくな方で、こちらの質問に答えながらも、手は止まりません。ちょうど布着せをやられていました。山下さんが言うには、普通の熟練した職人の3倍仕事が速いそうです。
背筋がピッと伸びて座業で仕事をする様は、古武士のようでした。若い頃は、あまり姿勢がいいために「あいつ、なんでふんぞり返ってるんや?」と言われたそうです。
帰りしなに、箪笥の上の箱をまさぐって、一番大きい箆を全部くれました。アスナロだと思います。
「もう、大きなものは塗らないから」とのことでしたが、
「割れば小さくなりますが、いいんですか?」
「そりゃ、勿体ないだろう」とのことでした。流石、わかってらっしゃる。
分厚い箆で、全く曲がりません。どうだかな~?と思っていると「まず、使ってみなさい。」でした。いや~、はじめは面喰いますが拭き漆にはとてもいいんです。ちょっと熟練はいりますが、目から鱗でした。
次回は、じっくり教えてもらう約束をしたんですが、結局これが形見分けのようになってしまいました。2年ほど後に亡くなられたのです。ガンだったと思います。あまり検診もしていなかったようです。角先生も前後して亡くなられました。
う~ん、でも、この箆は鵜島先生の代わりに、よく教えてくれたわ。
螺旋飾棚なんかは全部の面が捻じれているので、どうしても弾力のある薄い箆が必要です。
短いものは、棚を塗るのに使います。
なんでも、手広くやっているときりがないですね。