先日は、
ジグソーで、
新品・未使用のYチェアーをバラバラにしました。
“その筋”からの依頼で、詳細はほとぼりが冷めるまで言えん。
長いことYチェアーの張り替えをやっていると、色々あります。
去年持ち込まれた2脚は猫の爪の研ぎ場と化していました。しかし、フレームには傷一つなし。
正月に張り替えたのは、お犬様の餌食でした。
やるもんですね。
前脚の先端はこのようなお姿に。面倒なので短く切り揃えようと思ったのですが、5センチ以上低くなるので椅子としての機能を果たさなくなります。
*上3枚、フルサイズ一眼の描写力は矢張り違う。
こうして、
まあ、通常の使用では問題ないと思います。
同じ、ナラ材で修復。
なんとか体裁は整いました。
どこもペットには甘いのですね。子供がこんなことしたらお仕置きされますが。
うちのモモちゃんも3歳までは相当やりましたが、本気で怒る人はいませんでした。
最近Yチェアの張り替えが多いので、オーク材のものを追加した。
どうもすぐ、「ミイラ取りがミイラになる。」傾向があるようだ。ちょっと意味が違う?
しかし、すぐフォルムが変ったことに気が付きました。
新品はアームの傾斜がきついのです。大分違うな。
Yの部分はかなり立っています。付け根から全体がお辞儀したような塩梅です。
座面の大きさにも多少変更がありますが、背もたれが立ったために、この長さが旧タイプより25㎜短くなりました。
座った感じは当然旧タイプの方がゆったりしています。まあ、気にしなければ分かりません。どちらが良いとは言えません。使い方によります。
Yの部材は矢張り破損が多いのか、厚さ8㎜→9㎜になっております。
しかし、問題は最初のアームの傾斜です。ニュータイプはシャープでカッコいいんですが、旧型の方が断然落ち着いた印象です。長く見ていると旧型の方が良い。
ウェグナーに断りもせず、こんな変更をしていいのだろうか?まあ、俺には関係ないけど。
*最近張り替えたYチェアもニュータイプでしたから、仕様変更は5年以上前からだと思います。
なぜかYチェアの座面の張り替えは重なるもので、今月は16脚が持ち込まれる。流石に飽きた。朝起きると手がむくんでいる。
殆どのお客様はここまで使うか~!というくらいボロボロになって持ち込みますが、これは汚れてはいるもののまだまだ大丈夫。
でも、左の椅子は背もたれのYが折れてありませんでした。
ところで、この椅子の正式名称は“ウィシュボーン(Y字型の鳥の鎖骨)チェアー”です。
いやな感じですね。
穴の角度をきちんと調べてドリルで揉む。
最近、遠近両用眼鏡を外すことが増えてきたな。
刃物を駆使してホジクリ完了。
背もたれのYは2次曲面と思っていたら、当然3次曲面でした。治具から取り出して別枠で乾燥させる。
アイロン曲げ木を使いましたが、純正はラミネート曲げです。まあいいやろ。この部分、売ってくれるのかな?だとしたら無駄なことをしました。
完成。両端は胴付になっていて、面倒なことこの上ない。
しかも上端は6㎜、下端は7㎜。
割れていました。見ると強度不足の部材が使われている。Yチェアはこういうことがよくあります。量産品だからしょうがないでしょうけど。
お決まりのカバやメープルじゃなく、この部分にのみタモが使われています。この組み合わせは普通に見られますが理由は分かりません。
張替えも完了。完璧じゃ。
このお客様は、「Yの部分はもうなくてもいい。」と仰ったのですが、なかったらすぐ壊れるがな。¥15000で割に合わない修復を我から望んで申し出るあたり、人間の不思議を感じますね。
お客さんは「そんなにすんの!?」と言ってましたけど。普通の方がそう思うのも無理はありません。
たまにしか来ないYチェアの張り替えをまたしていました。
なぜに忙しい時に集中するのか?しかし、当てにならない個展の売り上げよりも目先の金の方が大事です。
意外に大儀なのは古いコードの除去。ハサミを研いでもすぐ切れなくなる。長年のホコリも溜まっていて、マスクをしての作業となります。
ヘアピンなどが出てきたことはありますが、札は出ません。ちなみに古本屋の密かな楽しみはへそくりが挟んであることらしい。
一脚、ガタついているということで、解体治具でばらしました。
なんじゃ~!このホゾ先の形状は?
貫2本、4か所全てのホゾ先がベルトサンダーで欠き取られていました。
これでは、前後に揺れるのも無理はありません。
これは以前、修理したもの。個体差はありますが、大体こんなに先細りになっています。
以下は、あくまで私の想像です。
Yチェアーを輸入するにあたって、完成品では空気を運ぶようなものですから、恐らくパーツで送られてくると思います。
それを、簡単に組み立てられるよう、木工にドシロートの日本の代理店が、ホゾ先を削ってしまったのでしょう。強度上、肝心要の部分をです。
日本で買った殆どのYチェアーにホゾの緩みがあり、デンマークやアメリカから持ち帰ったYチェアーが全く問題がないことに得心がいきました。
長年の謎が解けたぜ!
Yチェアーのガタつきは構造上の欠陥と思っていたのですがそうではありませんでした。
また、脚の先端の形状が一脚の中でもまちまちなのは、日本で脚を短くして適当に加工するからでしょうね。
家具の輸入代理店なんて、しっかりした経営基盤がないので所詮こんなものなんだろうな。
当社に持ち込まれるのは、10年前後経ったものが多いですが、今でもこんなことしているのかな?
流石にこれでは、再接着してもすぐに元に戻ります。
木片を張り付けて補修することにしました。お代は輸入代理店に請求してやろうかな。
小刀で削り出して完成。
全く、呆れるというより怒りを感じます。
さあ、精出して個展の準備じゃ。
*このお客様からメールがありました。以下原文のまま。
本日Yチェア届きました.ありがとうございます.
大変満足しております.14年前に買った当初からひもが緩かったので,買った直後に販売店に持って行って直してもらったのですが,戻ってきてもほとんどゆるいままでした.今回吉良様に直していただいて,これほど座りごこちのいい椅子だったのだと初めて知りました.中敷きのおかげもあるのかも知れませんが,とにかく感激しております.
ホームページも見せていただきました.大工事だったのですね.生まれ変わらせていただいて,感謝しております.
個展前のご多用の時期にもかかわらず,とてもきれいに直していただきまして,ありがとうございました.
個展のご成功を心よりお祈り申し上げます.
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補足:Yチェアの編み方では、後で修正することは出来ません。全部初めからやり直さなければなりません。それから大手輸入代理店に縁あってお聞きしたところ、日本で組み立てるのではなくて完成品で輸入されるそうです。ますます謎です。
「ハイエース」関連に続き、最近は「Yチェア」「Yチェア 張替え」でもGoogle検索で1位を獲得している。
さぞ、張り替えの注文が多いと思われるでしょうが、実際はボチボチ。丁度いいぐらいです。
これが簡単な作業なら、年老いた父親に丸投げして全部ピンはねしてやるんですが、長いことやっている私でも体力的にも技術的にも大変な仕事です。
今回は九州から4脚。“梱包システム”は送料がかかるけどゴミが出ません。
これからは家具の輸送にも使う予定です。
破損個所がありました。完全に木取りのミスです。でも、綺麗にパックリ割れているので簡単に治ります。
この4脚、全くホゾの緩みがない。以前張り替えた、アメリカ滞在中に買ったという2脚と非常に似た印象でした。
お客様に聞くと、デンマークで買ったとのこと。やっぱり。
カール・ハンセン社の日本仕様は品質が悪いような気がします。小柄な日本人なら大丈夫だと思っているのか。壊れたら、また買ってくれると思っているのか。
並行輸入品の脚を切った方がいいかもしれません。(輸入品は2㎝ほど脚長。)
勘ぐり過ぎだったら、ごめんなさいね。
今日は木工の中でも、ごく限られた製作者にしか関係ないマイナーな話です。
Yチェアに張るペーパーコードは最近、国産品を使っていましたが、きちんと強度を調べようと高知県工業技術センターに持ち込みました。
以前は木材の乾燥や椅子の強度試験でよく御世話になっていました。
まず、30センチの試験材の重さを計ったら、国産はデンマーク製の77%しかありませんでした。バラつきは殆どありませんでした。
アナログメータで計るのかと思ったら、パソコンと連動していました。荷重と同時に伸び率も記録されます。
チャッキング。測定開始!
切れた。
大体似たようなデータが取れたので、2本ずつで止めました。
左がデンマーク製、右が国産。強度はデンマーク製が上でした。一本で453キロに耐えます。国産の特徴は凄く伸びるということ。復元性の問題もあり、いいのか悪いのか分かりません。
単位重量当たりの強度は197と200でほぼ一致しました。つまり国産はデンマーク製の77%の強度であるということです。
デンマーク製の方が細いので、沢山張れそうに思いますが、テンションをかけた場合の太さはほぼ同じです。
さら詳しい試験も出来るそうですが、研究者じゃないし十分です。
昔お世話ななったSさんに言わすと、実用上大差ないとのことでした。両者を同じ条件で5年10年と使ってみて評価するのが確実でしょうけど。
まあ、Yチェアの張り替えはオリジナルを使うのが無難ということでしょうか。
国産ペーパーコードの“はやせ株式会社”に問い合わせると「何人かの木工家にもう10年も供給しているが耐久性や強度不足のクレームはない。」とのことでした。
最近、Yチェアの張り替えが増えました。矢張りハイブリッド張替えが人気のようです。
しかし、荷物の開封や梱包は手間なものです。お客様は、もっと大変なのは言うまでもありません。ゴミも出るしな。
ほんで、NASAの協力を受け、新システムを開発しました。
ここまでは前回と同じですが、包材は蛇腹のマットを使います。
まず、上半分に被せます。ゴムがきつくて一人でやるのは難しい。
片方を出来るだけ奥まで被せるのがコツです。
裏返して・・・・・・
もう一枚被せて・・・・・・可愛く紐で縛ったら完成です。
先に包材一式を宅急便で送ります。納品が済んだら同じように箱に詰めて、着払いで送り返して下さい。
往復の送料がこちら持ちなのが難ですが、中途半端な梱包より安心です。
2脚以上でしたらシステム使用料は無料です。
Yチェア2脚を張り替えると、入れ換わりにまた送られてきて、やっと終わったと思ったら、まだ2脚あるという。
つまり、一度に椅子がなくなると困るから、同じ包材を利用して3回往復させていたのです。実に賢いやり方ではあります。
輸送には手間要らずの「家財宅急便」を推薦していましたが、東京→高知が8千円もします。
今回はクロネコの「ヤマト便」で送る方法を説明します。
重ねてもカックイイな。
写真のように6か所を紐で縛れば動きません。きつく縛って下さいね。
紐の色は赤じゃなくても結構です。
上からプチプチや毛布をかけて2ヶ所縛ります。
裏返して縛ったら出来上がりです。
「ヤマト便」の場合、東京まで2脚で3千円くらい、契約をしていれば2千円くらいです。